「確認しました」の中身は、言えるか
検査や確認の作業には、たいてい手順があります。画面を開く、操作する、結果を見る。順番は決まっているのに、「何が出れば正しいか」を、見る前に言葉にしていないことがよくあります。
言葉にしないまま見ると、結果は「たぶん大丈夫そう」という印象で判定されます。印象は、毎回同じ基準になりません。忙しい日と余裕のある日で、同じものを見ても判定が変わります。
期待値は、対で先に書く
私たちが変えたのは、見る前に、期待値を対で書くという順番です。対にしたのは、まず 2 つです。
- 消えているはず → 0 件
- 出ているはず → 1 件以上
ここまでは、検査の話としてはよくある形だと思います。
3 つ目が、いちばん効いた
実際に効いたのは、もう 1 つ足した期待値でした。
- 触っていないはず → 1 件(そのまま残っている)
この 3 つ目が、「直したい範囲だけ直っていて、それ以外を壊していない」ことの証明になります。1 つ目・2 つ目だけだと、処理そのものが空振りしていても、結果だけ見れば正しく見えてしまうことがあります。触っていないはずのものが、触っていないはずの数のまま残っているかまで見て、初めて「狙った範囲だけ動いた」と言えます。
そして、もう 1 つ気づいたことがあります。期待値を書こうとする時点で、まだ測れていない項目に気づきます。「これ、何件が正解だっけ」と手が止まる瞬間があり、そこが実は一番あぶない場所でした。
実際に、こうして見つかった
正直に書きます。
- この順番で、AI に任せた検査で確認し直したところ、自社の公開している説明文の中に、実際とは違う記述が見つかりました。ある機能について「この機能はありません」と書かれた箇所があったのですが、実際にはすでに提供していました。しかも、その文には「正直な違いです」という一言が添えられていたため、書いた側も読む側も「確認済みの記述だ」と思い込んでいました。
- 誇大な表現は、読む側も警戒します。でも、実際より少なく書いている記述は、誰も警戒しません。控えめに見えるので、そのまま通ってしまいます。
- 見つかった箇所は、1 日で確認し直しました。公開しているコラムで 5 か所、サービス紹介ページで 5 か所、規約で 3 か所です。お客様にお渡しする書類にも、同じ誤りが及んでいました。
書こうとした時点で、もう気づく
期待値を先に書く効果は、検査の結果が正確になることだけではありません。書こうとする作業そのものが、漏れを見つける作業になっていることです。
「触っていないはずの箇所は、いくつ残っているべきか」を考えて言葉にしようとすると、そもそも自分が何を確認していなかったかに気づきます。見る前に立ち止まる 1 手間が、見たあとの手戻りより軽い、というだけの話です。
よくある質問
期待値を先に書くと、時間がかかりませんか。
1 件あたりは数十秒の話です。むしろ、あとで漏れに気づいて調べ直す時間のほうが長くなります。
「触っていないはず」の期待値は、どう決めればいいですか。
直す範囲の外にあるもののうち、数えやすいものを 1 つ選べば足ります。件数が変わらないことだけ確認できれば十分です。
すでにチェックリストがあります。それでも足りませんか。
チェックリストは「何を見るか」の一覧です。今回足りなかったのは「見たときに、いくつ出ればいいか」という数字のほうでした。両方そろって、初めて判定になります。
出典
- 本文の期待値の書き方と、見つかった記述のずれは、TEDIT 社内の検査手順の記録(2026-09-01)に基づく自社の事例です。社内の識別子・ファイル名は記載していません。(2026-09-01 確認)