COLUMNサイト制作と検索・AI

AI 対策の前に —— 論文を読んだら、書き換え系の施策はほぼ効かなかった

結論を先に書きます。AI 向けに文章を書き換える施策は、統制実験ではほとんど効かないか、むしろ順位を下げていました。効いていたのは「そもそも見つけてもらえる状態にすること」です。そしてその土台は、検索対策とほぼ同じものでした。

執筆: TEDIT(アポマル・カイランマルの開発元)

まず、あなたのサイトは AI から見えていますか

AEO・LLMO という言葉が広まりました。「AI に選ばれるための対策をしないと置いていかれる」という案内も増えています。ただ、その前に確かめておきたいことがあります。そもそも、そのサイトの中身が AI に届いているかどうかです。

ChatGPT・Claude・Perplexity のような AI サービスは、それぞれのプログラムでサイトを読みに来ます。ここで技術的な分かれ目が出ます。ブラウザで JavaScript が組み立てて表示するタイプのサイトは、これらのプログラムから見ると中身が空に見える可能性が高いのです。

  • ある実測では、これらのクローラは JavaScript ファイルを取得はするものの、実行はしていませんでした(取得の割合は 11.5%・23.8% など)※1
  • そもそも各社の公式ドキュメントには、JavaScript を実行するともしないとも書かれていません(4 社の公式ページを確認)※2
  • つまり「対応しているはず」と期待する根拠が、公式には存在しません

もしそうなら、これは対策以前の話です。どれだけ良い文章を書いても、そもそも読まれていないことになります。まっさきに確かめるべきはここです。

ここは正直に書いておきます

  • ただし「JavaScript で組み立てるサイトは引用されにくい」を直接測ったデータは、見つかりませんでした。あるのは「クローラが JavaScript を実行していない」という実測までで、そこから先は理屈による推論です
  • そしてこの実測データは、事実上 1 社の調査に依存しています。その調査元は、サーバー側で HTML を組み立てる仕組みを提供している会社でもあります(当社もその仕組みを使っています)。自分に都合のよいデータが単一ソースであることは、正直に書いておきます

ただし Google だけは話が別です

ここは誤解されやすいところです。Google の AI による概要や AI モードは、専用のプログラムが別に読みに来ているわけではありません。従来の検索用のプログラムがすでに読み取った内容を使っています。Google の公式ドキュメントにも、AI 用の表示は「独立した取得のための識別子を持たない」と明記されています。

つまり、Google の検索用プログラムは JavaScript を処理できるので、Google の AI 機能に対しては「JavaScript で組み立てるサイトは読まれない」という問題は起きません。

「AI に読まれない」という話は、Google 以外のサービスに限った話だということです。ここを一緒くたにして不安を煽る説明は、正確ではありません。

Google 公式は「特別な対策は不要」と言っています

さらに踏み込むと、Google は AI 向けの特別な施策について、かなりはっきり否定しています。公式ガイドから、そのまま引用します。

  • 「AI による概要や AI モードに表示されるための追加要件はなく、特別な最適化も必要ありません」※11
  • 「生成 AI 検索に構造化データは必須ではなく、追加すべき特別な schema.org のマークアップもありません」※11
  • 「完全にセマンティックな HTML である必要はありません」——ただし推奨はされています。その理由は AI のためではなく、スクリーンリーダーなどを使う方のためだと書かれています ※11
  • 「AI がよりよく理解するために、コンテンツを細切れにする必要はありません」※11
  • 「新しい機械可読ファイルや AI 向けのテキストファイルを作る必要はありません。作っても、表示や順位に害も利益もありません」※11

そして Google は同じガイドで「SEO のベストプラクティスは引き続き有効です」とも述べています。AI 向けの新しい何かではなく、これまでの取り組みがそのまま効くという立場です。

では、何が効くのか(統制実験の結果)

ここからが本題です。実際に何が効くのかを、条件を揃えて比べた研究がいくつかあります。結果は、世の中で語られている内容とかなり違いました。

研究で分かったこと補足
文章を AI 向けに書き換える54 通りの組み合わせのうち、有意に効果があったのは 3 つだけ。質問応答タスクではゼロ ※3本文だけを最適化すると、検索での到達率が 9%、絞り込み後の上位表示が 16% 下がった ※4
統計や引用を足す研究環境では最大 41% の改善。ただし単一手法・単一指標の最大値で、平均でも複合効果でもない ※5しかも元の順位が高いページでは、逆に下がった(後述)※5
キーワードを詰め込む同じ研究で 8.7% の悪化 ※5
構造・巡回のしやすさを整える唯一の因果検証で、施策 4 つのうち 3 つがこの領域だった ※6ただし効果の確からしさは「示唆的であって決定的ではない」と著者自身が明記 ※6

※ いずれも研究環境での測定です。実際のサービスでそのまま同じ結果になるとは限りません。特に一部の研究は、検索順位やページの取得しやすさを変数に含めていません(すでに候補に入っている文書だけを比べています)。

唯一、流入への因果を検証した研究が示したもの

AI 経由の流入が実際に増えたかどうかを、比較対象を置いて検証した研究があります。同じサイト内で手を入れなかったページを対照群にした自然実験です。そこで実施された施策は、次の 4 つでした。

  • URL の正規化(同じページに複数の入口があると、評価が分散します)
  • AI のクローラが出した「見つからない」記録から、需要のあるページを見つけて用意する
  • 見出しを問いの形にし、冒頭でその問いに答えきる
  • 検索から人が来ているページは書き換えない(守るべきものを壊さない)

4 つのうち 3 つが、文章の書き方ではなく、サイトの構造と巡回のしやすさに関するものです。これは「まず土台」という考え方と一致します。

ただし、この研究にも限界があります

  • 見かけ上は 5.7 倍の伸びでしたが、手を入れなかったページも 3.5 倍伸びていました。AI 利用そのものが増えた分です
  • 差し引いた純粋な効果は 1.82 倍。ただし検定の結果から、著者自身が「示唆的であって決定的ではない」と書いています
  • 著者の言葉を借りれば、世の中で語られる派手な倍率は「因果効果を大幅に過大に見せている」ことになります ※6

すでに上位のサイトは、AI 向け施策で下がります

もうひとつ、見落とされがちな結果があります。先ほどの研究で、元の検索順位ごとに効果を分けて測った表があります。そこでは、効果の符号が逆転していました。

1 位のページ5 位のページ
出典を引用する−30.3+115.1
引用を足す−22.9+99.7
統計を足す−20.6+97.9

※ 研究環境における指標の変化量(Position-Adjusted Word Count)。すでに上位に表示されているページでは、いずれの施策も数値が下がりました ※5

つまり、いま検索から人が来ているページに「AI 対策」として手を入れると、かえって悪くなる可能性があります。先ほどの因果研究で「検索から人が来ているページは書き換えない」という守りの施策が入っていたのは、おそらくこのためです。

45 本の研究を横断してまとめた論文に、この分野を要約する一文があります。「完璧に整形されたページも、候補に入っていなければ何も貢献できない」。書き方の工夫は、見つけてもらえる状態の代わりにはならない、ということです。

日本の現在地 — 慌てなくていい理由

数字を見ておきます。急ぐべきかどうかの判断材料になります。

  • 国内の生成 AI 利用率は、公的調査で 9.1%(2023 年度)から 26.7%(2024 年度)へ。民間調査では 54.7% という数字もあります ※7 ※8
  • AI による要約が出たとき、日本の利用者でいちばん多かった反応は「要約は読まず、下の検索結果からサイトへ行く」で 36.7%。調査対象 5 か国のなかで最も高い割合でした ※7
  • 一方で、AI 要約が表示された検索では、リンクをクリックした割合が 15% から 8% へ、およそ半減したという実測もあります(米国の行動パネル調査)※9

変化は起きています。ただ、日本ではまだ「AI の要約より、自分でサイトを見に行く」という方が多数派です。今日明日で流入がなくなる、という話ではありません。だからこそ、慌てて AI 専用の施策に飛びつくより、検索と AI の両方に効く土台を整えるほうが、投じた手間が無駄になりません。

結局、何をすればいいのか

調べた範囲で、根拠が確認できたものだけを並べます。特別なことは何もありません。

やる価値があること

  • サーバー側で HTML を組み立てる(本文が最初から HTML に載っている状態にする)
  • 1 ページに h1 は 1 つ。見出しの階層を崩さない(そのページが何の話かを、機械が特定できるようにする)
  • 同じページに複数の URL がある状態をなくす
  • リンク切れを放置しない(AI のクローラは「見つからない」に当たる割合が高いという実測があります ※1)
  • 各セクションを、それだけ読んでも意味が通る単位にする(前後を読まないと分からない文は、切り出して使われにくくなります ※10)
  • 検索から人が来ているページは、AI 対策と称して書き換えない

いま急いでやる必要がないこと

根拠が確認できなかった、または公式に不要とされているもの

  • AI 専用のテキストファイル(提案されている仕組みはありますが、主要な提供元による公式サポートは確認できていません。Google は明確に「使わない」と述べています)※11 ※12
  • AI のためだけの特別な構造化データ(Google は「生成 AI 検索に構造化データは必須ではない」と明記。ただし Microsoft は自社の仕組みで使っていると述べており、見解が分かれています)※11
  • 「AI での順位」を測るツール(同じ質問を 2 回して同じ並びが返る確率は 1/100 未満という調査があります)※13
  • コンテンツを細切れにすること(Google は「細かく分割する必要はない」と明記)※11

最後にひとつ。この記事を書くにあたって、業界でよく引用されている数字をいくつか出典まで辿ってみました。そのうち複数は、引用元の記事にその数字自体が存在しませんでした。孫引きの過程で生まれた数字が、根拠として流通しています。数字を見たら、出典まで辿ってみてください。この記事の数字も、すべて下に出典を置いてあります。

よくある質問

AEO・LLMO の対策は、やらなくていいということですか?

いいえ。ただ、優先順位が逆になっている場合が多い、というのが調べた結論です。文章を AI 向けに書き換える施策は統制実験で効果が確認できず、むしろ検索での見つかりやすさを下げた例もありました。先にやるべきは、機械が読める・巡回できる状態を作ることです。そしてそれは、検索対策とほとんど同じ作業になります。

検索対策と AI 対策は、別々にやる必要がありますか?

少なくとも Google に関しては、別々にする必要はありません。Google 自身が「SEO のベストプラクティスは、生成 AI の機能にも引き続き有効」と述べています。当社も、この記事のために特別なことは何もしていません。

いま使っているサイトが AI から読めているか、どう確かめますか?

いちばん簡単なのは、ブラウザで JavaScript を切って自分のページを開いてみることです。本文が消えるなら、JavaScript を実行しないクローラからは同じように見えています。あわせて、1 ページに h1 がいくつあるかも確認してみてください。ご自分で測るのが難しい場合は、この記事の 9 項目をそのまま当てる無料診断も承っています(測定項目と判定基準は事前公開しています)。

AI 経由の流入は、今どのくらいあるものですか?

ある調査では、サイト全体の訪問のうち AI 経由は 1.08% でした(13,770 ドメイン・33 億セッション。調査したのは関連ツールを提供する事業者です)※14。まだ主戦場は検索です。だからこそ、両方に同時に効く土台づくりから始めるのが合理的だと考えています。

出典

  1. The rise of the AI crawler — Vercel(自社ネットワークのクローラ実測。JavaScript を実行しないこと、「見つからない」応答の割合が高いことの出典)2026-08-06 確認)
  2. 各社の公式クローラ仕様ページ(OpenAI / Anthropic / Perplexity / Google の 4 社を確認。いずれのページにも JavaScript 実行の可否についての記述は見当たりませんでした)。リンク先は OpenAI のページです2026-08-06 確認)
  3. C-SEO Bench: Does Conversational SEO Work?(Puerto et al., 2025。2 タスク×3 ドメイン・約 1,900 クエリ・16,360 文書・54 組合せの統制実験)2026-08-06 確認)
  4. 45 本の研究を横断した学術サーベイ(2026 年 7 月)。本文のみを最適化した場合に上流の検索到達が下がるという測定(SAGEO Arena, Kim et al. 2026、171,003 文書・2,700 クエリ)は、本サーベイ内で紹介されているものです。本文末の「候補に入っていなければ貢献できない」の一節も同サーベイより2026-08-06 確認)
  5. GEO: Generative Engine Optimization(Aggarwal et al., ACM SIGKDD 2024)。本文の Table 1・Table 2 より。「最大 41%」は単一手法・単一指標の相対最大値2026-08-06 確認)
  6. 生成 AI 経由の流入への因果効果を、同一ドメイン内の非介入ページを対照群として推定した自然実験(Watanabe & Nakayashiki, 2026)。純効果 1.82 倍だが、プラセボ検定の結果から著者は「示唆的であって決定的ではない」と明記2026-08-06 確認)
  7. 令和 7 年版 情報通信白書 — 総務省(個人の生成 AI 利用率、AI による概要への反応の国際比較)2026-08-06 確認)
  8. 生成 AI サービス利用動向に関する調査 — ICT 総研(2026 年 2 月、回答者 2,024 名)2026-08-06 確認)
  9. Google users are less likely to click on links when an AI summary appears — Pew Research Center(米成人 900 名超の行動パネル、2025 年 3 月、68,879 件の検索を分析)2026-08-06 確認)
  10. Introducing Contextual Retrieval — Anthropic(文脈を失った断片は取り出されにくいことの定量データ。検索失敗率 5.7% → 3.7%。※ 検索の仕組みの内部の話であり、HTML 構造そのものの実験ではありません)2026-08-06 確認)
  11. Guide to optimizing for generative AI features — Google 検索セントラル(構造化データ・専用ファイル・分割の必要性についての公式見解。2026 年 7 月 10 日更新)2026-08-06 確認)
  12. Google 検索担当者による llms.txt に関する言及(推奨ではないことの報道)2026-08-06 確認)
  13. AI の推薦結果の一貫性に関する調査 — SparkToro(600 名の協力者・2,961 回のプロンプト実行、2026 年 1 月公開)2026-08-06 確認)
  14. AI 経由の参照トラフィックの割合に関する調査(13,770 ドメイン・33 億セッション)。※ 調査主体は関連ツールを提供する事業者です2026-08-06 確認)