紙は、怠慢で残っているのではありません
出席していない三十人はどこにいるのか。答えは、机の上の紙にあります。委任状と、議決権行使書。会場に来なかった住民の意思は、紙の上ですでに届いていました。
この記事は、掲示板をどうデジタル化するかという選択肢の話ではありません。マンションの連絡が、なぜ今も紙で成り立っているのか——その理由を先に認めるところから始めます。管理会社の日常業務の目線で数字を追うと、最後に見えてくるのは紙をなくす話ではなく、誰が運用するかという話でした。結論は最後に置きます。
国交省の令和5年度マンション総合調査に、総会の出欠を実際に測った設問があります。会場に来た人、24.6%。委任状を提出した人、28.9%。議決権行使書を提出した人、35.6% ※1。
つまり総会は、四人に一人しか会場に来ていません。残りの六割超は、紙が代わりに座っています。
これは住民がさぼっている証拠ではありません。仕事や介護で会場に行けない人の意思を、紙という手段で確実に拾い上げてきた——委任状と議決権行使書は、長くその役割を果たしてきました。紙が残っているのは、怠慢ではなく、機能していたからです。まず、そこを認めるところから始めます。
この紙を集める作業も、管理会社の日常です。委任状を回収し、議決権行使書を数え、総会資料に反映する。地味ですが、確実に人の時間を使う仕事です。
それでも、困る日があります
平時の案内なら、紙で十分でした。困るのは、急ぐ連絡と、返事がほしい連絡です。
設備の点検、在宅の立ち会いが要る工事、台風の前後の注意喚起。標準管理委託契約書には、こうした連絡・報告が管理員業務として明記されています ※2。理事会の開催調整や出欠の取りまとめも、事務管理業務として管理会社が担う範囲です。
点検の立ち会いを頼む相手が留守なら、日を改めて案内を出し直す必要があります。台風の接近が翌日に迫っているのに、貼りに行く時間そのものが取れないこともあります。急ぐ連絡ほど、紙という手段と相性が悪くなります。
つまりここは、管理会社にとって業務外の親切ではありません。もともと受託している仕事です。紙で行うか、別の方法で行うか。やり方の選択が残っているだけです。
名簿は、作った日がいちばん新しい
理事会支援には名簿が要ります。ここにも、国交省調査の数字があります。緊急連絡先を整備している組合のうち、更新頻度が十分——都度更新か年 1 回以上——と言えるのは 51.3% にとどまります ※1。
緊急連絡先を持っている組合の約半数は、その名簿を更新できていません。作った日がいちばん新しい名簿が、点検の案内にも、災害の日にも使われることになります。
ここで必要なのは「名簿を作りましょう」という提案ではありません。作った名簿が古くなる、その仕組みの問題を、仕組みで解くことです。友だち追加と連動して更新される名簿であれば、更新を忘れるという手順そのものが要らなくなります。名簿を毎年ぜんぶ作り直すのではなく、変化があった分だけ反映される形なら、負担は積み上がりません。
届けたい相手の連絡先を、契約上は持っていません
もうひとつ、構造の話をします。国交省の調査では、賃貸に出ている住戸のあるマンションは 77.8% にのぼります ※1。
一方で、管理会社と管理組合を結ぶ標準管理委託契約書が扱うのは、区分所有者の名簿です。実際にそこに住んでいる賃借人の連絡先は、この契約の対象に含まれません。管理会社は、届けたい相手の連絡先を、契約上そもそも持っていないことがあります。
掲示板やポスト投函が今も必要とされているのは、この空白を埋める手段だからです。デジタルに置き換えるとしても、この構造は消えません。届く相手を増やすには、住民自身に友だち追加という一歩を踏んでもらう入口を用意するしかない、ということでもあります。連絡先を集める作業を管理会社だけで抱え込まず、住民側からも届けてもらえる形にする——その発想の転換が要る領域です。
「連絡が届かない」は、不満の一位です
管理状況への不満理由をたずねた設問で、最も多かった回答は「一部の居住者の協力が得られにくい」56.4% でした。連絡が届かない、返事が返ってこない——それ自体が、管理組合の最大のストレスになっています ※1。
背景には役員の担い手の問題もあります。外部役員の選任を検討する理由として、区分所有者の高齢化 42.7%、役員のなり手不足 42.3% が挙げられています。連絡を出す側も、受け取る側も、限られた人数と時間でやりくりしている構造です ※1。
役員のなり手が見つかっても、連絡が届かず反応が返らなければ、その人はすぐに疲れてしまいます。不満理由の一位が「連絡が届かない」ことである以上、なり手不足への対策は、まず届く仕組みを整えることから始まるのかもしれません。
誰が運用するかで、続くかどうかが決まります
ここまでの数字を並べると、ひとつの分岐点が見えてきます。連絡の仕組みを、理事会が運用するか、管理会社が運用するか。
理事は多くの場合、一年で交代します。新しい理事が名簿の使い方を覚え、慣れたころにまた交代する——これでは仕組みは根付きません。一方、管理会社がフロント業務として運用すれば、担当者が代わっても仕組みは回り続けます。
だからこそ、私たちが提案する形は次のようになります。理事会が議題やアンケートの原案をつくり、管理会社がそれを配信・集計し、住民に届ける。管理画面を操作するのは、管理会社だけです。
この分担には三つの意味があります。ひとつは、理事会が住民の LINE の連絡先そのものに触れないというプライバシーの整理。ふたつめは、担当者が交代しても仕組みが止まらないという継続性。三つめは、この運用が管理会社に乗ることで、理事会に毎月見せられる仕事が増える、という関係の積み重ねです。名簿の管理は、もともと管理会社の受託業務でもあります。データの持ち手として、この形は契約上も無理がありません。
管理組合は、いつでも管理会社を選び直せます。非系列の物件が棟数比で 54.5%※3 を占めるように、受託は固定されたものではありません。理事会に毎月見せられる仕事が増えることは、選ばれ続けるための材料が増えることでもあります。
答え合わせ — 私たちが作っているもの
冒頭の問いに戻ります。総会の議席が半分空いていても議案が可決されるのは、紙が代わりに座っていたからでした。その紙を残しながら、急ぐ連絡と理事会の運用だけを、別の形に移すことはできないか——それが、この記事で考えてきたことです。
私たちは TEDIT で、連絡ツール「カイランマル」を作っています。事実だけを書きます。
- 選択肢を最大 13 個まで設定できる自由アンケートで、理事会の日程調整ができます。回答は自動で集計されます
- 棟別・工区別など複数グループに同時配信できます。両方に所属する住民にも重複なく 1 通届きます
- 未回答の住民だけをタップして個別にメッセージを送れます。送信履歴も残ります
- 住民からの自由なコメントは、管理画面にそのまま記録されます
- 支援が必要という回答やコメントの受信は、通常回答とは別に管理者へすぐ通知される設計です
- 受け取る側の操作は、LINE の友だち追加が一度だけです。専用アプリの導入も ID の発行もありません
- 自社運用プランは初期費用 0 円、〜100 名で月 5,000 円、〜300 名で月 10,000 円(税別)。30 日の無料トライアルつき、契約の縛りはありません。名簿整備・設定・配信代行まで含むおまかせプラン(初期 50,000 円 + 月 10,000 円・税別)もあります
できないことも、先に書きます。
- 震度に連動した自動発信、未回答者への自動再送、訓練配信には、現時点で対応していません。発信と再送はいずれも手動です
- 家族の安否確認や GPS の位置情報の機能はありません
- LINE 公式アカウントはお客様のご契約となり、配信数に応じた費用が別途かかります。導入前に総額でご試算をお出しします
- 添付ファイルは 1 件 10MB までです(PDF・画像)
- LINE をお使いでない住戸には届きません。掲示・投函との併用が前提になります
- 総会の招集通知など、法令や管理規約で書面の交付・掲示が定められている文書は、置き換えの対象外です。電子化できるかどうかは管理規約の定めに関わるため、専門家にご確認ください
紙は、これからも必要です。ただ、急ぐ連絡と、理事会の運用だけは、管理会社が持ち続ける仕組みに移してもいいかもしれません。
よくある質問
総会の招集通知など、書面が必要な文書もカイランマルに置き換えられますか?
いいえ。法令や管理規約で書面の交付・掲示が定められている文書は、置き換えの対象外です。電子化の可否は管理規約の定めや承諾の取り方に関わるため、必ず専門家にご確認ください。カイランマルが対象にしているのは、設備点検・工事の案内や理事会の日程調整など、書面の義務がない日常の連絡です。
理事会は管理画面を直接操作しますか?
いいえ。私たちが想定している運用は、理事会が議題やアンケートの原案をつくり、管理会社が配信と集計を担う形です。管理画面を操作するのは管理会社のみで、理事会は住民の LINE の連絡先そのものに触れません。理事は毎年交代することが多いため、運用を管理会社側に置くことで、担当者が代わっても仕組みが止まりません。
賃貸に出ている住戸の住民にも届きますか?
届けられます。ただし管理会社が最初から連絡先を持っているわけではありません。標準管理委託契約書が扱うのは区分所有者の名簿で、実際に住んでいる賃借人の連絡先は契約の対象に含まれません。カイランマルでは、住民ご本人に LINE の友だち追加をしていただくことで、契約上の名簿に縛られずに届く仕組みにしています。
出典