その前に —— この分野は、まだ何も確定していません
質問の前に、前提を共有させてください。数字はすべて出典を下に置いています。
- 条件をそろえて比較した統制実験では、AI 向けの書き換え手法 54 通りの組み合わせのうち、有意に効果があったのは 3 つだけでした。質問応答のタスクではゼロです ※1
- 本文だけを AI 向けに最適化すると、その手前の検索での到達率が 9%、絞り込み後の上位表示が 16%、最終的な引用が 6% 下がったという測定もあります ※2
- 実際の流入への因果を検証した研究は、当社が探した限り 1 本だけです。しかもその著者自身が「示唆的であって決定的ではない」と明記しています ※3
- 45 本の研究を横断した学術サーベイは、この分野の主要な主張をこう評定しています。世間でよく引かれる「40% 改善」は一般的な主張としては棄却、見つけやすさの改善の証拠は低、引用が売上につながるかの証拠は非常に低 ※2
つまり、「効果が確定している」と言い切る提案は、その時点で現状と食い違っています。ここを踏まえたうえで、7 つ見ていきます。
質問 1:それは Google 向けの話ですか、Google 以外の AI 向けの話ですか
いちばん最初に聞いてほしい質問です。この 2 つは、技術的にまったく別の話だからです。
Google の「AI による概要」や「AI モード」は、専用のプログラムが別に読みに来ているのではなく、従来の検索用プログラムが読み取った内容を使っています。Google の公式ドキュメントにも、AI 向けの識別子は独立した取得用の識別子を持たず、制御のためだけに使われると明記されています ※4。検索用プログラムは JavaScript を処理できますから、Google に対しては「JavaScript で組み立てたサイトが読まれない」という問題は起きません。
一方、ChatGPT・Claude・Perplexity は自前のプログラムで読みに来ます。そしてこれらは JavaScript を実行していない、という実測があります ※5。「AI に読まれない」という話は、こちら側に限った話です。
- 良い提案の答え方:この 2 つを分けて説明できます。「御社の場合、Google からはすでに問題なく読めています。課題があるのは Google 以外です」というように、どちらの話をしているかが常に明確です。
- 注意したい答え方:「AI」とだけ言って、両者を混ぜて危機感を語ります。混ぜると、実際には起きていない問題まで課題に見えてしまいます。
質問 2:「AI での順位」を測る、と言っていませんか
測定の話です。600 名の協力者が 2,961 回のプロンプトを実行した調査では、同じ質問を 2 回して同じブランドの並びが返る確率は 1/100 未満、順序まで一致する確率はおよそ 1/1000 でした ※6。
同じ入力で同じ出力が返らないものを、順位として測ることはできません。ですから「AI での順位を上げます」「順位を毎月レポートします」という提案は、測れないものを測ると言っていることになります。
なお、指標そのものの不安定さも申し添えておきます。当社が集めた複数の調査では、同じ指標(検索上位から引用される割合)の数値が調査ごとに何倍も食い違っていました。数字を並べたいところですが、いずれも一次の出所を特定しきれなかったため、ここには載せません。
- 良い提案の答え方:測れる範囲(機械が読める状態になっているか)と、測れない範囲(実際に引用されるか)を、はじめから分けて話します。
- 注意したい答え方:「AI 可視性スコア」のような独自指標を、根拠の説明なしに提示します。
質問 3:いま検索から人が来ているページを、書き換えると言っていませんか
これがいちばん、取り返しのつかない項目です。
ある研究で、施策の効果を「もともとの検索順位別」に分けて測った表があります。そこでは、効果の符号が逆転していました ※7。
| もともと 1 位のページ | もともと 5 位のページ | |
|---|---|---|
| 出典を引用する | −30.3 | +115.1 |
| 引用を足す | −22.9 | +99.7 |
| 統計を足す | −20.6 | +97.9 |
(研究環境における指標の変化量。すでに上位に表示されているページでは、いずれの施策も数値が下がりました)
同じ研究で、キーワードを詰め込む手法は 8.7% の悪化でした ※7。ちなみに、世間でよく引かれる「40% 改善」という数字も、この研究が出どころです。ただしそれは、単一の手法・単一の指標での相対的な最大値であって、平均でも複合効果でもありません ※7。
先ほど触れた「唯一、流入への因果を検証した研究」で実施された 4 つの施策のうち、ひとつは「Google から人が来ているページは書き換えない」という守りの施策でした ※3。おそらく、この逆転を踏まえてのことです。
- 良い提案の答え方:着手前に、いま流入のあるページを特定し、「ここは触りません」と範囲を決めます。
- 注意したい答え方:全ページを一律に「AI 向けに最適化」します。うまくいっているページほど、失うものが大きくなります。
質問 4:提案書の数字は、出典まで辿れますか
これは、今日この場でできる作業です。提案書に載っている数字をひとつ選んで、「この元データはどこですか」と聞いてみてください。そして URL が出てきたら、実際にそのページを開いて、その数字が本当にそこに書かれているかを確かめてください。
当社がこの分野を調べたときに、いちばん驚いたのがここでした。業界でよく引用されている数字をいくつか出典まで辿ったところ、複数は、引用元とされる記事にその数字自体が存在しませんでした。孫引きの過程で生まれた数字が、根拠として流通しているのです。
当社が「使わない」と判断した数値には、たとえばこういう類型があります(具体的な数字は、切り取られて広まるのを避けるため伏せます)。
- 「◯語程度のまとまりは◯倍引用されやすい」という、文章の長さと引用率の関係を語る数値
- 「表示速度が◯秒を切ると、平均◯件引用される」という、速度と引用数を結びつける数値
- 「◯という指標との相関が 0.8 台で、これが最強の予測因子」という相関値
- 「特定の構造化データを入れると 20〜30% 増える」という改善率
いずれも、流布元とされる記事を直接開いて確認しましたが、その数字に辿り着けませんでした。
- 良い提案の答え方:出典を即座に出せます。そして「これはベンダーの調査なので、割り引いて見てください」といった但し書きも自分から付けます。
- 注意したい答え方:「業界データによると」「一般的に言われている」で止まります。
質問 5:AI 向けの案内ファイル(llms.txt)を、主要な施策として提案していませんか
サイトに置く AI 向けのテキストファイルが提案されています。当社が調べた範囲では、これを公式にサポートしていると表明した主要な提供元は、ひとつも確認できませんでした。Google は公式ガイドで、こうしたファイルを作る必要はなく、作っても「表示や順位に害も利益もない」と明記しており ※8、同社の検索担当者も推奨ではないと述べています ※9。
置くこと自体に害はありません。問題は、それが目玉の施策として費用に乗っているときです。
- 良い提案の答え方:「効果の根拠はまだありませんが、手間もかからないので置いておきます」という位置づけで扱います。
- 注意したい答え方:これを中心施策として、単独で費用を計上します。
質問 6:構造化データを「入れないと AI に選ばれない」と説明していませんか
構造化データ(JSON-LD)は、入れる価値のあるものです。ただし、断定できる状況ではありません。
Google は「生成 AI 検索に構造化データは必須ではなく、追加すべき特別な schema.org のマークアップもありません」と明記しています ※8。一方で Microsoft は、自社の仕組みの理解に構造化データを使っていると述べています。つまり、提供元によって見解が割れている論点です。
ですから現時点で正確な言い方は、「入れる価値はあるが、AI のために必須というわけではない」です。当社の無料診断でも、この項目は良し悪しを判定せず、有無の報告に留めています。
- 良い提案の答え方:見解が割れていることを、自分から共有します。
- 注意したい答え方:「必須です」と言い切ります。割れていることを知らないか、言わないかのどちらかです。
質問 7:施策の中身は、結局 SEO と別物ですか
最後の質問です。提案されている作業を並べてみて、そのうち何割が「AI 専用の何か」でしょうか。
Google は公式ガイドで「SEO のベストプラクティスは引き続き有効です」と述べています ※8。冒頭の統制実験も、AI 向けの専用手法より「従来型の SEO のほうが有意に効果的」だと結論づけています ※1。
そして唯一の因果研究で実施された 4 つの施策のうち、3 つは文章の書き方ではなく、構造と巡回のしやすさに関するものでした ※3。
- 同じページに複数の入口がある状態をなくす(URL の正規化)
- AI のクローラが出した「見つかりません」の記録から、需要のあるページを見つけて用意する
- 検索から人が来ているページは書き換えない
- 良い提案の答え方:「これは AI にも検索にも同時に効きます」と説明できます。だから投じた手間が無駄になりません。
- 注意したい答え方:AI 専用の飾りが施策の大半を占めます。実証と逆を向いています。
答え合わせ —— では、お金を払う価値があるのは何か
7 つ並べてきましたが、種明かしをすると、この 7 つはすべて同じひとつのことを、角度を変えて聞いているだけです。
因果の向きが、世間の説明とは逆だということです。
正しくは「構造が良いから AI に選ばれる」ではありません。「構造が悪いと、選ばれる候補にすら入れない」です。同じ学術サーベイに、それを言い切った一文があります。「完璧に整形されたページも、候補に入っていなければ何も貢献できない」※2。
つまり構造は、天井を上げるものではなく、床です。床が抜けていれば何も始まりませんが、床を張ったから天井が上がるわけでもありません。この向きを取り違えた提案は、床の工事に天井の値段をつけていることになります。
そして急ぐ話でもありません。国内の生成 AI 利用率は公的調査で 9.1%(2023 年度)から 26.7%(2024 年度)へ伸びていますが、AI による要約が出たときの日本の利用者の反応で最も多かったのは「要約は読まず、下の検索結果からサイトへ行く」で 36.7%。調査対象 5 か国で最も高い割合でした ※10。米国の行動パネル調査では AI 要約が出た検索でリンクのクリックが 15% から 8% へおよそ半減し ※11、ある調査ではサイト全体の訪問のうち AI 経由は 1.08% でした(調査主体は関連ツールの提供事業者です)※12。
変化は起きています。ただ、主戦場はまだ検索です。だからこそ、両方に同時に効く土台から入るのが合理的だと当社は考えています。
最後に、当社自身の立場も書いておきます。当社は「AI に選ばれるサイトを作ります」とは言いません。Google 公式に否定されていますし、実測にも支えられていないからです。言うのは「AI から見えていない状態を解消します」まで。そして自社サイトの診断結果も、未実装の項目を含めて公開しています。測られる側に立たない診断は信用に足らない、と考えているからです。
この記事の 7 つの質問は、当社に対しても、そのまま使っていただいて構いません。
よくある質問
では、AEO・LLMO の対策は不要ということですか?
不要とは考えていません。優先順位が逆になっている提案が多い、というのが調べた結論です。AI 向けに文章を書き換える施策は統制実験で効果が確認できず、検索での見つかりやすさを下げた測定もありました。先にやるべきは、機械が読める・巡回できる状態を作ることで、それは検索対策とほとんど同じ作業になります。順番の問題です。
すでに AI 対策を契約しています。解約したほうがいいですか?
その判断材料としてこの 7 つをお使いください、という趣旨の記事です。契約先に質問 3(流入のあるページを書き換えていないか)と質問 4(提案書の数字の出典)の 2 つを確認していただくのが、いちばん効率が良いと思います。この 2 つで問題がなければ、少なくとも損をする方向には進んでいません。当社は他社様の契約解除をおすすめする立場にはありません。
自社サイトがどの状態にあるのか、まず知りたいのですが。
9 項目の機械測定を無料で承っています。測定項目も判定基準も、診断のページに事前に全部公開しています。問題がなければ「問題ありません」とお伝えしますし、レポートをお持ちになって他社様にご相談いただいても構いません。判定基準を公開しているのは、そのためでもあります。
出典
- C-SEO Bench: Does Conversational SEO Work?(Puerto et al., 2025。2 タスク × 3 ドメイン・約 1,900 クエリ・16,360 文書・54 組合せの統制実験。「従来型 SEO のほうが有意に効果的」の出典)(2026-08-06 確認)
- 45 本の研究を横断した学術サーベイ(2026 年 7 月)。本文のみ最適化時の到達率低下(SAGEO Arena, Kim et al. 2026、171,003 文書・2,700 クエリ)、主要主張の証拠評定、「候補に入っていなければ貢献できない」の一節は、いずれも本サーベイより(2026-08-06 確認)
- 生成 AI 経由の流入への因果効果を、同一ドメイン内の非介入ページを対照群として推定した自然実験(Watanabe & Nakayashiki, 2026)。介入 4 点の内訳、および著者による「示唆的であって決定的ではない」の明記(2026-08-06 確認)
- Google 検索セントラル「Google のクローラとフェッチャー」(AI 向け識別子が独立した HTTP ユーザーエージェント文字列を持たないことの公式記述)(2026-08-06 確認)
- The rise of the AI crawler — Vercel(主要 AI クローラが JavaScript を実行していないことの実測。※ 調査元はサーバー側レンダリングの仕組みの提供元であり、この実測は事実上 1 社に依存しています)(2026-08-06 確認)
- AI の推薦結果の一貫性に関する調査 — SparkToro(600 名の協力者・2,961 回のプロンプト実行、2026 年 1 月公開)(2026-08-06 確認)
- GEO: Generative Engine Optimization(Aggarwal et al., ACM SIGKDD 2024)。順位別の効果表は本文 Table 2、キーワード詰め込みの悪化は Table 1 より。「最大 41%」は単一手法・単一指標の相対最大値(2026-08-06 確認)
- Guide to optimizing for generative AI features — Google 検索セントラル(構造化データが必須でないこと、AI 向けファイルに害も利益もないこと、SEO のベストプラクティスが引き続き有効であることの公式見解。2026 年 7 月 10 日更新)(2026-08-06 確認)
- Google 検索担当者による llms.txt に関する言及(推奨ではないことの報道)(2026-08-06 確認)
- 令和 7 年版 情報通信白書 — 総務省(個人の生成 AI 利用率、AI による概要への反応の国際比較)(2026-08-06 確認)
- Google users are less likely to click on links when an AI summary appears — Pew Research Center(米成人 900 名超の行動パネル、2025 年 3 月、68,879 件の検索を分析)(2026-08-06 確認)
- AI 経由の参照トラフィックの割合に関する調査(13,770 ドメイン・33 億セッション)。※ 調査主体は関連ツールを提供する事業者です(2026-08-06 確認)