COLUMN連絡網と安否確認

来年の役員が困らない連絡網 — PTA の道具選びは「引き継げるか」で決まります

引き継ぎの日に渡されるファイルには、たいてい前々年度の手順書が挟まっています。

執筆: TEDIT(アポマル・カイランマルの開発元)

PTA の連絡網は「機能」では決まりません

去年の役員さんが「ここは変えました」と付箋を貼ってくれていて、その付箋の指す画面が、もうありません。連絡網のアカウントは前の書記さんの個人のメールアドレスで作られ、パスワードは口頭で伝えられ、誰も控えていない——PTA の連絡手段の話をすると、この種のエピソードが必ず出てきます。

PTA の道具選びには、会社にも自治会にもない条件があります。決めた人が、翌年にはいないことです。この記事では、その条件から連絡網の選び方を考えます。結論のうち一つは先に書きます。無料のもので足りるなら、それがいちばんです。

企業が社内ツールを選ぶときは、機能と価格を並べて比べます。PTA では、その比較表があまり役に立ちません。理由は 3 つです。

  • 役員が毎年入れ替わる — 今年の IT に強い役員さんが設定した仕組みは、来年の役員さんが引き継ぎます。設定した本人が翌年もいる前提の道具は、その時点で条件を外れます
  • 全員が有志で、業務命令がない — 保護者の方にお願いするとき、根拠にできるのは「お願い」だけです。アプリの導入も ID の発行も、断られる可能性があります
  • 年度替わりに、名簿が総入れ替えになる — 卒業されたご家庭が抜け、新入生のご家庭が入ります。この作業が重い道具は、毎年 3 月と 4 月に必ず苦労します

だから、PTA で見るべき条件は「何ができるか」より、来年の役員さんが、説明されずに使えるかです。機能が多い道具ほど引き継ぎの手順書が長くなり、長い手順書ほど読まれません。

グループ LINE でやってみると、出てくること

いちばん多いのは、学年やクラスごとのグループ LINE でしょう。すぐ始められて、費用もかかりません。実際、それで回っている PTA はたくさんあります。そのうえで、続けると出てくることを書きます。

  • 既読の数では、誰が見ていないか分からない — 「既読 28」と表示されても、28 人が誰かは分かりません。締切のある提出物で、誰に声をかければいいのかが決まりません
  • 個人同士がつながることの気疲れ — 参加した時点で、全員のアカウント名と、多くの場合は顔写真が、他の保護者全員に見えます。既読をつけるタイミング、返事をするかどうか。連絡とは関係のないところで気を使う方が出ます
  • 退会の処理が、気まずい — 卒業や転校のたびに、誰かが外す操作をします。外す側にとっても、事務的には済みません
  • 年度が替わると、作り直しになる — 新しいグループを作り、全員を招待し直します。招待に気づかなかった方を追いかけるのが、毎年 4 月の仕事になります
  • 管理が個人のスマートフォンに乗る — グループを作った役員さんが、引き継ぎのときに管理を渡す手段は実質ありません

どれも道具の欠陥ではありません。グループ LINE は「みんなの井戸端」であって、名簿にもとづく公式連絡のために作られたものではない、というだけです。役割が違うところに使うと、こうなります。

選択肢を 4 つに整理する

  • A. 電話連絡網 — 費用はかかりません。ただし順番に回す構造なので、途中の一軒が不在だとその先に届かず、どこで止まったかも分かりません。連絡先の一覧を紙で配ることに抵抗のあるご家庭も増えています。
  • B. 学校の一斉メール・無料の連絡網サービス — 学校が導入している一斉メールや、学校・保護者向けに無料で提供されている連絡網サービスを使う形です。学校からの連絡がこちらで届いているなら、PTA の連絡もここに乗せられないか、まず確認してください。追加の費用も、新しく覚えることもありません。制約は、PTA 側で配信先を分けたり独自の集計をしたりできない場合があること。使い方は学校のルール次第です。
  • C. グループ LINE — 前の節のとおりです。手軽さは他のどれにも勝ります。公式連絡と雑談が同じ場所に置かれること、名簿の管理が構造として存在しないことが、そのまま制約になります。
  • D. 連絡網サービス(有料・LINE 活用型を含む) — 名簿の管理・配信・集計を専用の管理画面で行い、受け取り口は保護者の方がすでに使っている手段(メールや LINE)にする型です。費用がかかること、LINE 活用型なら LINE をお使いでない方に届かないことが制約です。
A 電話連絡網B 学校の一斉メール等C グループ LINED 連絡網サービス
費用0 円0 円(学校の仕組みに乗る)0 円かかる
保護者の準備連絡先の提出学校の登録どおりグループ参加登録 or 友だち追加
届き方順番に回る全員に同時全員に同時全員に同時
誰が未回答か分からない仕組みによる分からない名前で分かる
保護者同士の可視性名簿が配られる見えない全員に見える1 対 1 なら見えない
年度替わりの入れ替え名簿の作り直し学校側で更新グループ作り直し名簿の入れ替え

※ 各方式の一般的な特徴をまとめたもので、個別のサービスの機能を断定するものではありません。

無料のもので足りるなら、それが一番です

ここははっきり書きます。

学校向け・保護者向けの連絡網サービスには、基本の機能を無料で提供しているものが複数あります。一斉配信と出欠の確認くらいまでなら、無料の範囲で足りる PTA のほうが多いはずです。足りているなら、乗り換える理由はありません。会費で運営されている以上、支出は総会で説明できる必要があり、「便利そうだから」は理由になりません。

同じ意味で、これも書いておきます。児童・生徒の安否確認は、学校の仕組みが本線です。災害時に子どもたちの状況を確認し、引き渡しを判断するのは学校の役割で、PTA が肩代わりするものではありません。PTA 側で連絡が必要になるのは、行事の中止判断、役員間の連絡、地域行事での集合状況の確認といった範囲です。「PTA に安否確認システムを」と考えるのは、順番が違います。

では、有料の道具を検討する余地があるのはどこか

そのうえで、無料の範囲では手が届かなくなる PTA もあります。目安は次のあたりです。

  • 会費で運営していて、年間の予算の中で説明できる規模がある — 支出の根拠を総会で説明できることが前提です
  • 出欠や提出物の集計を、毎回手作業でやっている — 集める人数が多いほど、集計が役員さんの時間を奪います
  • 配信先を分ける必要がある — 全体、学年、委員会、地区班。分けて送りたい単位が複数あると、無料の仕組みでは足りないことがあります
  • 学校の仕組みに PTA の連絡を乗せられない — 学校のルール上、PTA 独自の配信ができない場合です
  • 年度替わりの入れ替え作業が、毎年の負担になっている — ここは道具の設計で大きく変わります

2 つ以上に当てはまるなら、検討する価値はあります。1 つも当てはまらないなら、いまのままで十分です。

「名簿から外せば止まる」が、年度替わりに効きます

PTA の道具選びで、最後に効いてくるのがここだと思っています。

グループ型の仕組みでは、メンバーの出入りは「誰かが操作する」ことで行われます。だから作り直しになり、外し忘れが残ります。名簿にもとづいて配信する仕組みなら、出入りは名簿の編集です。名簿から外れた時点で、配信は届かなくなります。卒業されたご家庭を一括で外し、新入生のご家庭を一括で取り込む。年度替わりに必要なのは、その 2 つだけです。

引き継ぎも同じです。名簿と配信の履歴がクラウド側にあるなら、それは組織のデータで、役員が交代しても消えません。来年の役員さんに渡すのは、手順書ではなく管理画面へのアクセスになります。

選ぶときに見る 3 点

  • 来年の役員さんが、説明なしで使えるか — 手順書が 1 枚に収まらない道具は、たぶん引き継げません
  • 保護者にお願いすることは、いくつあるか — 導入・ID 発行・説明会。この数が、届かないご家庭の数になります
  • 無料の範囲で足りないのは、具体的にどこか — これを 1 行で書けないうちは、まだ有料の道具を選ぶ段階ではありません

答え合わせ — 私たちが作っているもの

冒頭の話に戻ります。前の書記さんの個人アドレスで作られたアカウント。口頭で伝えられたパスワード。あれをなくす方法は、そんなに難しくありません。連絡網を、個人の持ち物にしないことです。

TEDIT では、上の D にあたる連絡ツール「カイランマル」を作っています。会社・団体と、はたらく人・会員をつなぐ道具で、ふだんの連絡と災害時の安否確認を 1 つで行います。ただ、この記事の読者の方に無理におすすめするつもりはありません。無料で足りるなら、それが一番だと本当に思っています。そのうえで、事実だけを書きます。

  • 受け取る側の操作は、友だち追加が一度だけ。アプリのインストールも ID の発行もありません
  • 組織の LINE 公式アカウントから一人ひとりへ 1 対 1 で届きます。受け取る側同士は互いに一切見えません
  • 名簿はクラウドで管理し、手入力・CSV 一括・LINE の友だち追加の連携に対応。班ごとの配信もできます
  • 出欠・安否はボタンで戻り、自動で一覧に。未回答の方はお名前つきで残ります
  • 資料はクラウド保管で、リンク切れしない URL が本文に付きます(1 件 10MB まで、PDF・画像)。管理画面はスマートフォンのブラウザで動きます
  • 自社運用プランは初期費用 0 円、〜100 名で月 5,000 円、〜300 名で月 10,000 円(税別)。30 日の無料トライアルつき、契約の縛りなし
  • 解約されても、LINE 公式アカウントと友だちはそのまま残ります。止まるのはカイランマルの機能だけです

最後の 1 行は、毎年役員が替わる組織には大事な点かもしれません。試して合わなければ、翌年の役員さんに「合わなかった」とだけ引き継げます。

できないことも先に書きます

  • 震度に連動した自動発信、未回答者への自動再送、訓練配信は現時点では対応していません(手動での発信・再送になります)
  • LINE 公式アカウントは組織側のご契約となり、配信数に応じた費用が別途かかります。導入前に総額でご試算をお出しします
  • LINE をお使いでない方には届きません。移行期間は、いまの手段との併用をおすすめしています
  • 会員同士が議論する場ではありません。公式の連絡専用で、横のやりとりは従来どおりの場で

私たちが主にご案内しているのは、企業と、歯科医師会などの団体です。町内会・自治会でのご利用もご相談いただけます。PTA・保護者会も、上の条件に当てはまるようでしたらご相談ください。当てはまらないようでしたら、いまの仕組みのままで大丈夫です。

引き継ぐのは、パスワードではなく、仕組みのほうがいい。それだけの話です。

よくある質問

PTA でも使えますか?

ご相談いただけます。ただし、学校の一斉メールや無料の連絡網サービスで足りているなら、そちらをお使いいただくのがいちばんです。有料の道具を検討する目安は、会費で運営していて予算の中で説明できる規模があること、出欠や提出物の集計を毎回手作業でやっていること、配信先を学年や委員会で分ける必要があること、年度替わりの入れ替えが毎年の負担になっていること——このあたりです。

役員が毎年替わりますが、引き継げますか?

名簿も配信の履歴もクラウド側にあるため、個人のスマートフォンには依存しません。次の役員の方には管理画面へのアクセスをお渡しする形になります。名簿の入れ替えも、卒業されたご家庭を外し、新しいご家庭を取り込む操作で完了します(手入力のほか CSV での一括取り込みに対応しています)。グループを毎年作り直す作業はありません。

保護者の方に、アプリを入れてもらう必要はありますか?

ありません。お願いするのは、LINE で組織の公式アカウントを友だち追加していただくこと、ただ一度だけです。ID もパスワードもないため、忘れられて再発行する手間も発生しません。なお、保護者の方同士は互いに一切見えず、組織側に見えるのも表示名だけです。LINE をお使いでない方には届かないため、移行期間はいまの手段との併用をおすすめしています。