COLUMNAI導入

一発で当てにいかない — AI に任せるとき、直される前提のほうが速い

AI に仕事を渡すとき、つい「一発で正解が返ってくる指示」を書こうとしてしまいます。そして、その指示を書くのに 30 分かかる。これは AI の側の話ではなく、任せ方の設計の話です。

執筆: TEDIT(アポマル・カイランマルの開発元)

完璧な指示を書こうとして、手が止まる

「ここを直して」とだけ言うと、意図しないところまで変わる。だから前提を書き、範囲を書き、やってほしくないことも書く。気づくと、指示が長くなっています。

そのうち、指示を書く時間のほうが、自分でやる時間より長くなる。ここで多くの人が「思ったほど楽にならない」と感じて止まります。

原因は、一発で当てにいこうとしていることです。

間違ったまま進むより、直されるほうが速い

私たちは前提を変えました。渡す指示には間違いが混ざる、という前提です。

実際、ある一日に私たちが渡した指示には、間違いが 3 つありました。読んでほしい資料の範囲を狭く切りすぎて、必要な決定事項を隠してしまった。一度「これは書いていい」と言った内容が、あとで取り消されたのに、その訂正が届いていなかった。成果物を置く場所を、実際の構造を確かめずに指定した。

3 つとも、受け取った側が実際のコードや記録を確かめて、違いを指摘してくれました。もし一発で正解を渡すつもりでいたら、3 つとも間違ったまま進んでいます。あとで直すほうが、確実に高くつきました。

押し返しは、勇気ではなく「形」

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

指示を受けた側が違和感を持っても、そのまま進んでしまうことがあります。理由は遠慮だと思われがちですが、実際は言い方の形が分からないことのほうが多いです。

効く形は決まっています。

  • ❌「この指示はおかしいと思います」 — 相手の判断を否定する形。受け取った側は身構えます
  • ⭕「実際に確かめたところ、こうでした」 — 事実を足す形。判断はまだ相手の手元にあります

後者だと、相手には材料が 1 つ増えるだけです。決めるのは相手のまま。だから通ります。これは AI に対しても、人に対しても同じでした。

任せる側が、ひとつだけやること

任せる側がやることも 1 つだけです。「違っていたら、根拠を添えて返してください」と先に言っておく。

これを言っていないと、受け取った側は「指示どおりにやるのが仕事だ」と判断します。当然です。押し返してよいと言われていない場所で、押し返す人はいません。

そして、返ってきたときに叱らないこと。一度でも叱ると、次からは返ってきません。確認の層が 1 枚減るということです。ここは、失うものが大きいわりに、失ったことに気づきにくい場所です。

直された回数は、失敗の数ではない

正直に書きます。

  • 直される前提にしても、指示を書く手間がゼロになるわけではありません。範囲と、やってほしくないことは、やはり書く必要があります。
  • 変わるのは、書き上がるまで渡せないという縛りが外れることです。8 割で渡して、違うところを教えてもらって、直す。この往復のほうが、10 割を目指して止まっているより先に進みます。
  • そして、直された回数は失敗の数ではありません。間違ったまま外に出るはずだったものが、出る前に止まった回数です。数えるなら、そちらとして数えてください。

よくある質問

毎回押し返されたら、かえって時間がかかりませんか。

押し返しの中身によります。事実が添えられた指摘は、確認の時間を減らします。逆に、根拠のない「違う気がします」が増えると時間はかかるので、「根拠を添えて」まで含めて先に伝えておくのが要点です。

どこまで任せていいか分かりません。

取り返しがつく範囲から、が目安です。あとから直せる作業は任せて、外に出るもの・消えると戻せないものは手元に残す。この線を最初に引いておくと、任せる範囲は少しずつ広げられます。

8 割で渡すと、雑な指示になりませんか。

8 割は「雑」ではなく「決まっているところまで」という意味です。決まっていないことを決まったように書くほうが、あとの手戻りは大きくなります。

出典

  1. 本文の「ある一日に指示の間違いが 3 つ」は、TEDIT 社内の作業記録(2026-09-15)に基づく自社の事例です。社内の識別子・案件名は記載していません。(2026-09-15 確認)
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