無断キャンセルは、たいてい「忘れられた予約」です
その時間のために枠を空け、準備をして待っていました。電話をかけても、つながりません。同じ日にお断りした方の顔が浮かびます。
こういう日が続くと、「来ない人が悪い」と言いたくなります。当然だと思います。ただ、そこで止まると打ち手がなくなります。人を責めることからは、次の一手が出てきません。
来られなかった理由を並べてみると、悪意はあまり多くありません。
- 予約したこと自体を忘れていた — 2 週間先、1 か月先の予約ほど起こります
- 日時を勘違いしていた — 口頭だけで決めた予約、控えをお渡ししていない予約で起こります
- 行けないと分かっていたけれど、連絡しづらかった — 電話をかける気まずさと、受付時間の制約が重なります
- 症状が良くなったので、行かなくていいと自分で判断した — 中断の連絡は「言いにくいこと」の側に入ります
- 急な体調不良・仕事・交通の事情 — これは、どんな仕組みでも残ります
上から 4 つは、患者さんの性格ではなく、予約の受け方と連絡のしやすさで変わる部分です。つまり、設計できます。この記事では、予約を取る瞬間・思い出す機会・キャンセル連絡のしやすさ・来なかったあとの 4 点に分けて整理します。答えは最後に置きます。
① 予約を取る瞬間 — 記憶に頼らせない
「では、2 週間後の火曜、11 時で」。受付でそう決めた瞬間、患者さんは確かに覚えています。問題は 10 日後です。
この 2 週間のあいだに、患者さんの生活には別の予定がいくつも入ります。そこで頼りになるのは記憶ではなく、手元に残っているものです。診察券に書き込んだ日時、お渡しした予約票、届いたメッセージ。何も残っていなければ、忘れられても不思議はありません。
もうひとつ、見落とされやすい点があります。「押さえられた枠」と「自分で選んだ枠」では、記憶への残り方が違うのではないでしょうか。空いている時間を提示されて自分で選んだ予約のほうが、自分の予定として扱われやすくなります。
- 患者さんの手元に、日時の分かるものが残るか — 口頭だけで決めた予約は、記憶だけが控えになります
- その控えは、なくしにくい場所にあるか — 財布に入れた紙より、ふだん開く画面のほうが残ります
- 日時を変えたくなったとき、どこを見れば変えられるかを、その場でお伝えしているか
- 遠い先の予約を取るのか、近づいてから取っていただくのか — 通院の間隔が決まっているなら、その頃にこちらから声をかける形もあります
遠い先の予約は、枠を埋める意味では有効ですが、忘れられる確率も一緒に上がります。次の来院の目安が決まっている施術なら、その時期が近づいてからこちらから声をかけて、そこで取っていただく形も選べます。どちらが向くかは、施術の内容と患者さんの層で変わります。
② 思い出す機会をつくる — 「いつ」と「どこへ」
リマインドは、いちばん分かりやすい打ち手です。ただ、実際に効くかどうかは「いつ」と「どこへ」で決まります。
いつ、から。前日の夕方が基本ですが、遠い先の予約なら数日前にもう一度あると届きやすくなります。朝いちばんの予約なら、前日のうちにお伝えしておかないと間に合いません。
どこへ、のほうが大事かもしれません。電話は、確実に届く手段のようでいて、出ていただけないことがあります。留守電は聞かれないこともあります。届く場所とは、患者さんがふだん自分から開いている場所のことです。
- 自動で出るか — 誰かが覚えていないと送られない仕組みは、いちばん忙しい日に止まります。そして忙しい日ほど、予約は埋まっています
- 患者さんがふだん開く場所に届くか — 開かれない箱に送ると、送った側だけが安心して終わります
- そのまま変更・キャンセルの操作につながるか — 思い出したその瞬間が、連絡していただける唯一のタイミングです
- 送りすぎていないか — 頻度が高いほど読まれなくなります。前日 1 通で足りる方に、3 通は要りません
3 つ目は、とくに効きます。リマインドを読んで「あ、明日だ。でも行けない」と思ったとき、そこから電話をかけ直す必要があるなら、多くの方はそのまま画面を閉じます。思い出していただいた瞬間に、そのまま変更やキャンセルの操作までつながっているかどうかが、無断キャンセルと連絡ありのキャンセルの分かれ目です。
③ キャンセルの連絡を、しやすくする
ここが、いちばん見落とされる点だと思います。
無断キャンセルの一部は、行けないと分かっていたのに連絡できなかったものです。連絡しづらさの正体は、だいたい 3 つあります。電話をかける心理的な負担(謝らなければ、と思うと重くなります)、受付時間内にしか連絡できないこと、そして何と言えばいいか分からないこと。
ここで、対策の向きを間違えやすくなります。キャンセルを減らしたいからといって、キャンセルを申し出にくくすると、増えるのは無断キャンセルのほうです。連絡をいただけていれば、少なくとも枠が空く前に分かります。キャンセル待ちの方に回せますし、その時間の使い方も決められます。
- 受付時間の外でも、連絡を残せること — 「明日行けない」と気づくのは、たいてい夜です
- 声を出さずに済む手段があること — 文字のほうが伝えやすい方は、思っているより多くいらっしゃいます
- 変更が、キャンセルと同じ場所でできること — 「行けません」より「ずらしたい」のほうが、患者さんにとっても院にとっても良い着地です
- 責める返事が返ってこないと、あらかじめ分かっていること — 一度気まずい思いをすると、次は連絡なしになります
言い方を変えると、院が本当に困っているのは「キャンセルされること」ではなく「知らされないまま枠が空くこと」です。この 2 つを分けて考えると、打ち手が変わります。
④ 来なかったあと、どう向き合うか
来られなかった方に、その日のうちに一通お送りするかどうか。ここで、次に戻ってこられるかが変わります。
気まずさは、放っておくと大きくなります。連絡しないまま日が経つほど、患者さんの側からは連絡しづらくなり、そのまま通院が途切れます。歯科でも接骨院でも、途中で切れた治療は、たいてい戻ってからまた来院されます。
- その日のうちに、一通だけ — 「お加減いかがですか。ご都合が合えば、次回のご予約を承ります」。責める文面ではなく、戻ってくる道を残す文面にします
- 通院が途中で切れることの意味を、こちらは知っています — 症状が戻ってから来られるより、続けていただくほうが患者さんのためになります。だから連絡は、売上の話ではなく治療の話としてお送りします
- 記録して、数えます — 誰が、どの曜日・どの時間帯で来られなかったか。特定の枠に集中しているなら、それは患者さんの問題ではなく枠の設計の問題かもしれません
- 責めるためではなく、次の設計のために数えます — 仕事帰りの遅い枠、月曜の朝、雨の日。傾向が見えたら、リマインドの時間や枠の取り方を変えられます
数えることについて、ひとつだけ。目的は、誰かを特定して構えることではありません。特定の曜日や時間帯に偏っているなら、そこはもともと予定が変わりやすい枠だということです。リマインドの時間を早めるか、その枠の取り方を変えるか。数字は、患者さんではなく設計に向けて使うものだと考えています。
キャンセル料の話は、慎重に
キャンセル料や規約の整備を検討される院もあります。この記事では、その是非を論じません。判断の前提が院ごとに違いすぎますし、当社は法律の助言をする立場にないからです。規約の書き方・掲示の仕方・実際に請求できるかどうかは、必ず法律の専門家にご確認ください。
申し添えるのは、順番のことだけです。忘れられていた予約に料金を設定しても、忘れる構造は変わりません。①〜④を整えたうえで、それでも残るものに対して考える話ではないでしょうか。
そして、仕組みで解けないものもあります。ここは正直に書いておきます。
仕組みでは解けないこと
- 急な体調不良・お仕事・交通の事情 — これは減らせませんし、減らすべきものでもありません
- 連絡そのものを受け取れない方 — 電話・窓口での対応は、これからも残ります
- 通う必要がなくなった方 — 無理に引き戻すところではないと考えています
- 院との相性が合わなかった場合 — ここで必要なのはリマインドではなく、別の見直しです
答え合わせ — 4 つは、同じことを言っています
4 点を並べてきましたが、種明かしをすると、すべて同じひとつのことを角度を変えて言っているだけです。
予約を、患者さんの記憶の外に置くということです。
記憶に頼るから忘れられ、電話だけに頼るから連絡が来ません。予約の控えと、思い出す連絡と、変更の操作と、来院後のご連絡が同じ場所にまとまっていれば、患者さんは迷う場面がありません。逆に、それぞれが別の場所にあるほど、途中で止まる場所が増えます。
TEDIT では、その考え方で歯科医院・接骨院のための LINE 予約「アポマル」を作っています。宣伝になってしまうので、事実だけを、できないことも含めて書きます。
- 予約の受付・変更・キャンセルと、前日のリマインドまでを、公式 LINE の中で完結できます
- 予約のやりとりがトークに残るので、控えをなくす場面がありません。変更したいときも、同じトークから操作できます
- 接骨院・整体院版では、来院間隔に合わせた再来のお知らせも送れます
- 患者さんにお願いするのは友だち追加が一度だけで、アプリの追加も会員登録もありません
- 接骨院・整体院版の費用は初期 50,000 円・月額 5,000 円(税別)。最低利用期間はなく、月単位で解約できて解約金もかかりません(歯科版の費用は、それぞれのご案内ページに記載しています)
- いまお使いの公式 LINE にそのまま導入でき、友だちは引き継がれます。ご利用をやめても、公式 LINE と友だちは院のお手元に残ります
アポマルができないこと
- LINE をお使いでない患者さんには届きません。電話・窓口との併用が前提です
- レセコン・電子カルテ、療養費請求との連携はありません(予約データは CSV・PDF で書き出せます)
- 既存の予約データを自動で移行する仕組みはありません
- リマインドを送っても、来られない日はあります。無断キャンセルをゼロにする道具ではありません
なお、LINE 公式アカウントの費用は院のご契約となり、配信数に応じて別途かかります ※1。
最後にもう一度だけ。無断キャンセルをゼロにする方法を、私たちは知りません。減らせるのは、忘れられた予約と、言い出せなかったキャンセルの分です。そこは、責める前に設計できます。
よくある質問
リマインドを送れば、無断キャンセルはなくなりますか?
なくなりません。減らせる見込みがあるのは「忘れていた」「日時を勘違いしていた」「連絡しづらかった」に由来する分だけで、急な体調不良やお仕事の事情は残ります。ゼロを目標にすると、どこまでやっても足りない気持ちになります。減らせる種類のものから順に手を打つ、という考え方をおすすめしています。
キャンセル料は、取ったほうがいいのでしょうか?
当社は是非を申し上げる立場にありません。規約の書き方・掲示の仕方・実際に請求できるかどうかは、法律の専門家にご確認ください。ひとつだけ申し添えると、順番の話はあります。忘れられていた予約に料金を設定しても、忘れる構造そのものは変わりません。この記事の 4 点を整えたうえで、それでも残るものに対して考える話だと思います。
前日に電話で確認しています。それでも変える必要がありますか?
必要とは限りません。電話でしっかり届いていて、かけ直しの手間も負担でないなら、それで足りています。負担になりやすいのは、出ていただけない方への何度かのかけ直しと、そのために診療の手が止まることのほうです。判断材料は「先月、確認のために何回かけ直したか」だと思います。数えてみて気にならない回数なら、いまのままで十分です。
高齢の患者さんが多いのですが、どこから手を付ければよいですか?
LINE をお使いでない方には配信型の連絡が届かないので、まずは控えの渡し方からをおすすめします。次回の日時を書いたものを必ずお渡しする、留守番電話の案内文に折り返しの時間帯を入れる、といった紙と電話の側の見直しです。そのうえで、LINE をお使いの層にだけ別の受け口を用意する、という順番が現実的だと考えています。
出典