掲示板と投函の限界は、紙であることではありません
この一行を全戸に伝え終えるまでに、何時間かかるでしょうか。掲示板に貼るなら、まず現地へ行く必要があります。エントランスに 1 枚、エレベーターホールに 1 枚。読むのは、そこを通った人だけです。
急ぎでない案内なら、それで十分でした。問題は、急ぐ日があることです。この記事では、マンションの一斉連絡をデジタルにする 5 つの選択肢を、デジタルに置き換えないほうがよい領域も含めて整理します。結論は最後に置きます。
掲示板とポスト投函の弱点を「紙だから」とまとめると、打ち手を間違えます。困っているのは紙そのものではなく、次の 4 点です。
- 貼りに行かないと始まらない — 発信の起点が「担当者が現地にいること」に縛られます。夜間・休日や、別物件にいる時間帯は発信できません
- 読むのは、そこを通った人だけ — 掲示板は「置いておく」道具で、「届ける」道具ではありません
- 届いたかどうかが分からない — 貼った側の仕事は貼った時点で終わりますが、受け取った側の状況は最後まで見えません
- 貼り替えと投函の手間が積み上がる — 掲示は剥がす作業まで含み、全戸投函は戸数がそのまま作業時間になります
置き換えるときに見るべきなのもここです。「一斉に送れます」だけの道具に替えると、上 2 つは解けますが、下 2 つ——確認と手間——は別の手作業として残ります。
分単位で伝えたい日は、年に何度かあります
平時のお知らせは、掲示板で足ります。担当者の方が実際に困るのは、こういう日ではないでしょうか。
- 断水・給水設備の緊急停止、エレベーターの停止と復旧見込み
- 消防設備点検・排水管清掃など、在宅のご協力が要る作業の直前案内
- 台風・大雪の前後の注意喚起と、被害が出たあとの状況確認
- 地震のあとの、建物の使用可否と設備の稼働状況
共通しているのは、伝わる速さがそのまま問い合わせの数を決めることです。届いていない住戸の数だけ、管理会社の窓口や担当者の携帯が鳴ります。
そして下 2 つは、掲示板を貼りに行けない日でもあります。いちばん連絡が必要な日に、いちばん動かない手段になっている——これが、平時の連絡と有事の連絡を別々に考えないほうがよい理由です。
デジタルにする、5 つの選択肢
- A. 掲示板(現状) — 費用は紙代だけ。全員が見る前提には立てませんが、法令や管理規約で掲示が定められている告知には引き続き必要です。
- B. ポスト投函・郵送 — 確実に住戸には届きます。ただし届くのは投函が終わったあとで、開封されたかは分かりません。
- C. マンション専用アプリ型のサービス — 住民向けのアプリを配り、お知らせ・掲示・各種申請をその中にまとめる型です。機能はよくそろっています。壁は導入で、全戸にアプリを入れてもらい、ID とパスワードを配る必要があります(次の節で詳しく書きます)。
- D. グループ LINE — いちばん手軽です。ただし全員のアカウントが互いに見えること、公式のお知らせが雑談に埋もれること、退去された方を外しにくいことが課題になります。
- E. LINE 活用型のサービス — 受け取り口を、多くの方がすでに使っている LINE にして、名簿の管理・配信・集計は専用の管理画面で行う型です。受け取る側の操作は友だち追加が一度だけ。当然、LINE をお使いでない方には届きません。
| A 掲示板 | B 投函・郵送 | C 専用アプリ型 | D グループ LINE | E LINE 活用型 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 住民の準備 | 不要 | 不要 | アプリ導入 + ID 発行 | グループ参加 | 友だち追加のみ |
| 発信の起点 | 現地に行く | 現地に行く | 管理画面 | スマホ | 管理画面・スマホ |
| 届くまで | 通りがかるまで | 投函し終わるまで | すぐ | すぐ | すぐ |
| 届いたか | 分からない | 分からない | 分かる | 埋もれやすい | 分かる |
| 返事の集計 | なし | なし | 自動 | 手作業 | 自動 |
| 住民同士の可視性 | — | — | 製品による | 全員に見える | 1 対 1 なら見えない |
| 名簿の管理 | 不要 | 手元の表 | 管理画面 | 手動で出し入れ | 管理画面 |
※ 各方式の一般的な特徴をまとめたもので、個別の製品の機能を断定するものではありません。
相手は「従業員」ではなく「住民」です
社内システムなら、多少の抵抗があっても最後は「業務です」と言えます。マンションでは言えません。住民一人ひとりに対しては、お願いしかできないからです。総会で承認を取っても、承認したのは管理組合であって、個々の住戸のスマートフォンではありません。導入率が伸びなければ「入れている人だけに届く道具」になり、掲示板と投函がそのまま残ります。
だから、選定で最初に見るべきなのは機能表ではなく、受け取る側にお願いすることがいくつあるかです。アプリの導入、ID の発行、パスワードの再発行、使い方の説明。この数がそのまま、導入が止まる確率になります。
もう一つ、住民ならではの論点があります。グループ LINE で連絡網を作ると、参加した時点で全員のアカウント名が隣人全員に見えます。善意で作られたグループが、退去後も残り続けることもあります。管理の連絡に必要なのは、住民同士がつながることではありません。管理する側と、一人ひとりの住戸が 1 対 1 でつながることです。この形なら住民同士は互いに見えず、名簿から外した時点で配信が止まるので、退去された方の扱いも構造で解けます。
管理会社なら、1 物件で終わりません
フロント担当者の方は、複数の物件を持っています。物件ごとに連絡手段がばらばらだと、担当替えのたびに引き継ぎが発生します。同じ道具で全物件を回せるなら、こうなります。
- 物件ごと・棟ごと・階ごとに配信先を分けて、必要な範囲にだけ送る
- 発信をスマートフォンから行えるなら、別物件にいる時間帯でも現地に戻らず告知できる
- 名簿と配信履歴が組織のデータとして残り、担当者が交代しても個人のスマートフォンに依存しません
3 つ目が、実務ではいちばん効くかもしれません。個人のアカウントで作ったグループ LINE は、担当者が異動した瞬間に引き継げなくなります。組織の資産として持つのか、担当者個人の連絡先として持つのか——道具を選ぶ前に決めておく話です。
なお、複数物件での契約の形は物件数と規模で変わります。一般論で書けないため、個別にご相談いただく前提でお読みください。
デジタルに置き換えない領域があります
デジタル化の道具を作っている立場で言うのも変ですが、置き換えないほうがよい領域があります。
置き換えないほうがよい 3 つの領域
- 法令や管理規約で書面の交付・掲示が定められている文書 — 総会の招集通知や決算関係の書類など、書面が前提の手続きは残ります。電子化の可否は管理規約の定めや承諾の取り方に関わるため、必ず管理組合の顧問や専門家にご確認ください。この記事は、その領域を置き換える提案ではありません
- 緊急時の掲示 — 停電や通信障害のときは、配信そのものが届きません。エントランスの紙 1 枚が、最後まで残る手段です
- スマートフォンをお使いでない住戸 — 配信型の道具は届きません。掲示・投函との併用が前提になります
デジタル化は「掲示板と投函をなくすこと」ではなく、急ぐ連絡と、返事が欲しい連絡を、そちらへ寄せることだと考えています。全部を移そうとすると、たいてい破綻します。
選ぶときに見る 4 点
- 住民にお願いすることは、いくつあるか — アプリ導入・ID 発行・説明。この数が、導入が止まる確率です
- 名簿から外したら、配信が止まるか — 退去された方に届き続ける状態は、後始末のほうが手間になります
- 現地に行かずに発信できるか — 発信の起点が現地にあるかぎり、夜間・休日の告知は速くなりません
- 急ぐ日と、急がない日で、同じ操作か — 年に数回しか使わない緊急用の仕組みは、その数回にうまく動きません
答え合わせ — 私たちが作っているもの
冒頭の問いに戻ります。「エレベーターが止まりました」を全戸に届けるのに、何時間かかるか。
私たちの答えは「その時間は、道具ではなく構造で決まっている」です。現地に行って貼る構造である限り、何時間かは移動時間で決まります。名簿にもとづいて一人ひとりに直接届く構造なら、送信ボタンを押した時点で終わります。
TEDIT では、上の E にあたる連絡ツール「カイランマル」を作っています。会社・団体と、はたらく人・会員をつなぐ道具で、ふだんの業務連絡と災害時の安否確認を 1 つで行います。事実だけを書きます。
- 受け取る側の操作は、友だち追加が一度だけ。アプリのインストールも ID の発行もありません
- 組織の LINE 公式アカウントから一人ひとりへ 1 対 1 で届きます(グループ投稿ではありません)。受け取る側同士は互いに一切見えず、担当者個人のアカウントも使いません
- 名簿はクラウドで管理し、LINE の友だち追加と連動。班ごとの配信で棟や階を送り分けられます
- 出欠・安否はボタンで戻り、自動で一覧に。未回答の方はお名前つきで残ります
- 資料はクラウド保管で、リンク切れしない URL が本文に付きます(1 件 10MB まで、PDF・画像)。管理画面はスマートフォンのブラウザで動くので、発信のために現地へ戻る必要もありません
- 自社運用プランは初期費用 0 円、〜100 名で月 5,000 円、〜300 名で月 10,000 円(税別)。30 日の無料トライアルつき、契約の縛りなし。名簿整備・設定・配信代行まで含むおまかせプラン(初期 50,000 円 + 月 10,000 円・税別)もあります
できないことも先に書きます
- 震度に連動した自動発信、未回答者への自動再送、訓練配信は現時点では対応していません(手動での発信・再送になります)
- 家族の安否確認や GPS の位置情報の機能はありません
- LINE 公式アカウントはお客様のご契約となり、配信数に応じた費用が別途かかります。導入前に総額でご試算をお出しします
- LINE をお使いでない方には届きません。掲示・投函との併用が前提です
企業と、歯科医師会などの団体向けにご案内していますが、マンション管理・町内会・自治会でのご利用もご相談いただけます。
掲示板は、これからも必要です。ただ、貼りに行くまで始まらない連絡だけは、先に手放してもいいかもしれません。
よくある質問
管理会社が複数のマンションで使うことはできますか?
できます。物件ごと・棟ごと・階ごとに配信先を分けて送れるため、担当されている複数物件を同じ管理画面から運用いただけます。ただし契約の単位(物件ごとに分けるか、まとめるか)と費用は、物件数と各物件の規模によって変わります。総額でのご試算をお出ししますので、個別にご相談ください。
住民の方に、アプリを入れてもらう必要はありませんか?
ありません。お願いするのは、LINE で管理側の公式アカウントを友だち追加していただくこと、ただ一度だけです。ID の発行もパスワードもないため、忘れられて再発行する作業も発生しません。ただし LINE をお使いでない住戸には届かないため、掲示・投函との併用が前提になります。
個人情報が住民同士に見えてしまいませんか?
見えません。配信は管理側と一人ひとりの 1 対 1 で行われ、受け取る側同士は互いに一切見えない構造です。管理側に見えるのも表示名だけで、個人の電話番号やメールアドレスは渡りません(チャット機能はオフに設定して導入します)。退去された方は名簿から外すだけで配信が止まります。