COLUMN連絡網と安否確認

その日、従業員の何人と連絡が取れますか — 中小企業の安否確認、最初の一歩

金曜の午後 3 時すぎ、建物が大きく揺れました。

執筆: TEDIT(アポマル・カイランマルの開発元)

揺れが収まって、最初にすることは何ですか

書棚の上のファイルが落ち、しばらくして揺れが収まります。オフィスにいる人の無事は、顔を見れば分かります。問題は、そこにいない人です。

「全員の無事を確認してください」と言われたとき、確認する相手はこういう方々になります。

  • 外回りの営業担当や、現場に出ている方 — 社内にいないので、目で見て確認できません
  • 在宅勤務の方、直行直帰の方 — その日どこにいたかを、会社側が把握していないことがあります
  • その日が休みだった方、パート・アルバイトの方 — 名簿から漏れやすい層です
  • 出張で被災地の外にいる方 — こちらの状況が伝わらないと、帰社の判断ができません

名簿を開いて、上から電話をかけ始めます。すると、たいてい 3 つのことが同時に起きます。

  • 回線が混みます。つながらない相手に、もう一度かけ直すことになります
  • かけている担当者自身も被災しています。自宅の状況を確認したい人に、100 件の電話をお願いすることになります
  • どこまでかけ終わったかが分からなくなります。紙にチェックを付けていても、途中で中断が入ります

この記事は、製品の比較記事ではありません。道具を選ぶ前に決めておくことがいくつかあって、そこが決まっていないと、どの道具を買っても同じところで止まる——という話です。私たちが何を作っているかは、いちばん最後に書きます。

道具を買う前に決める、4 つのこと

安否確認の体制は、機能表からではなく、この 4 つから決めたほうが早く固まります。どれも、道具を買わなくても今日決められることです。

1. 名簿 — 誰を対象にして、どこに置くか

  • 対象に、パート・アルバイト・派遣の方、常駐している協力会社の方を含めるかを決める — あとから足すより、最初に線を引いておくほうが揉めません
  • 名簿の置き場所を決める — 社内サーバーの中だけにあると、停電したその日に開けません。手元に持ち出せる形(紙 1 部でも)を用意しておきます
  • 更新の担当と頻度を決める — 入社・退職のたびに直す運用にしないと、いざという日に「辞めた人に送り、入った人に送っていない」状態になります

2. 連絡手段 — 送る道と、返ってくる道

見落とされやすいのは、送る道と返す道が別だということです。呼びかけは一斉に送れても、返事の集め方を決めていないと、結局そこから電話が始まります。「どうやって呼びかけるか」と「どうやって返してもらうか」を、必ずセットで決めてください。手段の選択肢は、次の節で並べます。

3. 確認する項目 — 何を聞くか

  • 最初の 1 通は「無事 / 要支援」の 2 択で十分です。歩きながら、片手で押せる粒度にしてください
  • 住所・家族の状況・出社の可否は、次の便で聞きます。1 通に詰め込むほど、返信率は落ちます
  • 自由記述の欄を用意するなら、必須にはしないでください。書けない状況の方が、回答そのものをやめてしまいます

4. 呼びかける役割 — 誰が、いつ送るか

  • 発信できる人を、最低 2 人決めておく — 1 人だけだと、その方が出張中・被災中のときに誰も送れません
  • 「どういうときに送るか」の目安を決めておく — 震度いくつ以上か、警報が出たときか。手動で発信する仕組みなら、この目安が発動条件そのものになります
  • 文面を、平時のうちに下書きして保存しておく — 揺れた直後に文章を考える時間は、思っているよりありません

この 4 つを決めずに道具から入ると、機能の多い管理画面が、空の名簿を抱えたまま残ります。逆に 4 つが決まっていれば、必要な機能はおのずと絞られます。

呼びかけの手段は、5 つあります

決めた 4 つを実際に動かす手段は、大きく 5 つに分かれます。

  • A. 電話連絡網 — 道具はいりません。人数が少なければ、いちばん確実で速い方法です。ただし順番に回す構造のため、どこかで止まるとその先に届きません。
  • B. メールの一斉送信 — 追加の費用がほとんどかかりません。ただし迷惑メールフォルダに入って気づかれない問題が構造的に残り、集計は手作業になります。
  • C. グループチャット・グループ LINE — すぐ始められます。ただし返事はスタンプや文章で戻るため、誰が答えて誰が答えていないかは人が数えることになります。
  • D. 専用の安否確認システム — 震度に連動した自動発信、未回答者への自動再送、訓練配信といった機能がそろっています。壁は導入で、全員にアプリを入れてもらい、ID を配る必要があります。
  • E. LINE 活用型のサービス — 受け取り口を、多くの方がすでに使っている LINE にして、名簿の管理・配信・集計は専用の管理画面で行う型です。受け取る側の操作は友だち追加が一度だけ。当然、LINE をお使いでない方には届きません。
A 電話連絡網B メールC グループチャットD 専用システムE LINE 活用型
名簿の置き場所手元の紙・表手元の表グループの中管理画面管理画面
呼びかける人各担当が順番に担当者 1 人誰でも担当者担当者
返事の集まり方折り返しの電話返信メールスタンプ・文章ボタンボタン
未回答の把握手で消し込む手で消し込む既読の数だけ自動で一覧自動で一覧
受け取る側の準備不要アドレス提出グループ参加アプリ導入 + ID友だち追加のみ
平時の出番ほぼなしありあり安否専用が中心あり

※ 各手段の一般的な特徴をまとめたもので、個別の製品の機能を断定するものではありません。

電話連絡網を古い方法として片付けるつもりはありません。10 名ほどの会社なら、声が聞けるぶん電話がいちばん確実です。人数が増えて「誰にかけ終わったか分からなくなる」規模に入ったところが、道具を考える境目だと思います。

災害は、当日で終わりません

ここが、安否確認をシステムとして考えるときに抜けやすい部分です。被害は当日で終わらず、むしろ翌日からのほうが長く続きます。

  • 当日 — 安否確認。「無事」「要支援」が戻ってくれば、その日にすべきことが決まります
  • 翌日 — 出社できるかの確認。交通が止まっていれば、来られる人と来られない人に分かれます
  • 数日間 — 復旧の日程調整と、自宅待機中の方への状況確認。ここがいちばん長く続きます
  • その先 — 段階に応じた情報共有と指示。落ち着けば、そのまま平時の連絡網に戻ります

それから、対象は地震だけではありません。台風、大雨、河川の氾濫、大雪。水や風の災害は、毎年どこかで起きています。震度計が反応しない災害のときに、同じ手順で呼びかけられるかどうかは、確認しておいて損のない点です。

当日の 1 通だけを想定して選ぶと、翌日からのやりとりが電話とメールに散らばります。「確認 → 判断 → 指示」を何度も繰り返すのが災害後の実務なので、その往復に耐える道具かどうかで見てください。

費用の考え方 — 「災害のときだけの投資」にしない

価格の相場も書いておきます。一般的な安否確認システムは、初期費用が 0〜約 16 万円、100 名規模の月額がおよそ 4,400〜22,000 円(中心帯 9,600〜15,000 円)でした※2。社内連絡ツールのほうは 1 人あたりの ID 課金が主流で、調査した 10 社中 8 社が 1 人 330〜1,180 円/月です※2。

稟議で止まる理由は、たいてい金額の大小ではありません。「使うかどうか分からないものに、毎月払う」という説明のしづらさです。ここを越える考え方は 1 つだけだと思っています。平時の業務連絡と兼用にすることです。ふだん使っている道具が有事にも動くなら、それは災害のときだけの投資ではなくなります。

これは経理上の理屈だけの話ではありません。全国規模の一斉訓練(1,921 社・702,114 名が参加)では、平均回答率は 81.4% でした※1。訓練に参加するほど意識の高い企業でも、およそ 2 割の返事が集まらないということです。年に一度しか触らない道具は、その一度もうまく動きません。ふだん押しているボタンだけが、当日も押されます。

もう一点。見積もりは必ず総額で取ってください。本体の月額とは別に、別契約の費用が乗る製品があります。最初に総額を聞いておけば、稟議のやり直しが減ります。

最初の一歩は、今日できます

道具を決める前でも、進められることがあります。

  • 名簿を、持ち出せる形で 1 部つくる — データの置き場所が停電で開かない前提の、最後の一枚です
  • 「無事 / 要支援」の 2 択の文面を、今日書いて保存する — 送る日には、文面を考える余裕がありません
  • 発信できる人を 2 人決めて、本人に伝える — 決めただけで伝えていない役割は、当日に動きません
  • 平時に一度、同じ手段で送ってみる — 訓練の機能がなくても、ふだんの業務連絡がそのまま練習になります

この 4 つを済ませてから製品を見に行くと、営業の方の説明が急に短くなります。聞くべきことが、こちらで決まっているからです。

答え合わせ — 私たちが作っているもの

TEDIT では、上の E にあたる連絡ツール「カイランマル」を作っています。ふだんの業務連絡と、災害の日の安否確認を 1 つで行う道具です。宣伝になってしまうので、事実だけを書きます。

  • 従業員の方の操作は、LINE の友だち追加が一度だけ。アプリのインストールも、ID の発行もありません
  • 名簿はクラウドで会社が一元管理し、LINE の友だち追加と連動します。名簿から外せば配信は止まります
  • 安否も出欠もボタンで戻り、自動で一覧になります。未回答の方はお名前つきで残り、その場から個別にメッセージを送れます
  • 会社側に見えるのは表示名だけです。チャット機能はオフに設定して導入します
  • 自社運用プランは初期費用 0 円、〜100 名で月 5,000 円、〜300 名で月 10,000 円(税別)。名簿整備・設定・配信代行まで含むおまかせプラン(初期 50,000 円 + 月 10,000 円・税別)もあります
  • 30 日の無料トライアルつきで、契約の縛りはありません。LINE 公式アカウントの費用まで含めた総額でも、100 名・月 4〜50 回の配信で月 10,000 円の想定です※4

なお、個人の LINE だけで通知から回答・集計まで完結する安否確認の専業サービスは、当社が調べた 15 社の中にはありませんでした※3。だから優れている、という話ではありません。専用アプリ型が積み上げてきた機能を、こちらは持っていないからです。

できないことも先に書きます

  • 震度に連動した自動発信、未回答者への一斉自動再送、訓練配信は現時点では対応していません(発信も、未回答の方への個別送信も手動での操作になります)。これらは専用アプリ型の標準機能です
  • 家族の安否確認、GPS による位置情報の機能はありません
  • LINE 公式アカウントはお客様のご契約となり、配信数に応じた費用が別途かかります。導入前に総額でご試算をお出しします
  • 添付は 1 件 10MB までです。LINE をお使いでない方には届きません

震度連動の自動発信や訓練配信が要件の上位にあるなら、専用アプリ型の製品が良い選択です。そのうえで「まず名簿と 2 択の返事から始めたい」「平時の連絡と分けたくない」が要件に来るようでしたら、一度ご相談ください。

冒頭の問いに戻ります。その日、従業員の何人と連絡が取れるか。答えは道具ではなく、名簿と、決めておいた 4 つのことで決まります。道具は、そのあとで足すものです。

よくある質問

従業員が 20 名ほどの会社でも、仕組みは必要ですか?

20 名なら、電話で回りきれる規模です。道具より先に決めておきたいのは、名簿・2 択の文面・発信できる人が 2 人いること、この 3 つだと考えています。逆に、拠点が分かれている、直行直帰や在宅の方が多い、パートの方まで含めると人数が読めない——このあたりが当てはまるようでしたら、名簿と集計を持つ道具を検討する段階かもしれません。

震度に連動して自動で送る仕組みは、必須の要件ですか?

会社の体制によります。夜間や休日に担当者が不在でも発動させる必要があるなら、譲れない要件です。専用アプリ型のサービスでは標準的な機能なので、そちらをご検討ください。一方、担当者が状況を見てから送る運用にしている会社では、震度計が反応しない台風・大雨・大雪のときにも同じ操作で送れるほうが実務に合う、というご意見もいただきます。どちらが正しいという話ではなく、誰が発信するかを先に決めると、選ぶべき型が決まります。

安否確認の訓練は、どうすればよいですか?

訓練配信の機能を持つ製品なら、その機能で実施し記録まで残せます。機能を持たない道具を使う場合は、ふだんの業務連絡がそのまま練習を兼ねます。年に一度の訓練でしか触らない道具より、毎月ボタンを押している道具のほうが、当日に迷わないからです。なお、当社のカイランマルには訓練配信の機能はありません(正直な違いです)。

従業員から「個人の連絡先を会社に出したくない」と言われそうです。

手段によって、提出をお願いするものが変わります。メールなら個人のアドレス、専用アプリ型なら個人の端末へのインストールとアカウント登録です。LINE 活用型の場合は、会社の公式アカウントを友だち追加していただく形になり、会社側に見えるのは表示名だけで、個人のアカウントや電話番号は渡りません。いずれの手段でも、何が会社に見えて何が見えないのかを、導入前に文章で説明できる状態にしておくのが近道です。

出典

  1. 安否確認サービス大手 1 社の「全国一斉安否確認訓練 2024」レポート(1,921 社・702,114 名参加)2026-08-03 確認)
  2. 安否確認システム 15 社・社内連絡ツール 10 社の公式ページ掲載価格を当社で確認した集計。価格を公開していない製品もあり、各製品の実際の費用を断定するものではありません2026-08-03 確認)
  3. 安否確認サービス 15 社の公式ページ調査(当社調べ)。個人の LINE だけで通知から回答・集計まで完結する安否確認の専業サービスは、調査した 15 社の中にはありませんでした2026-08-03 確認)
  4. LINE 公式アカウントの各プラン(コミュニケーション 0 円・月 200 通 / ライト 5,000 円(税別)・月 5,000 通 / スタンダード 15,000 円(税別)・月 30,000 通)。出典: LINEヤフー for Business 料金プランページ。2026 年 10 月に追加メッセージ料金の改定が予告されています2026-08-03 確認)